忘れた頃にやってくる、下肢切断術の術式です。緊急手術の際に慌てないように、忘備録です。
切断術はアンプタとも言います。英語では、大腿切断はTrans Femoral Amputation, Above Knee Amputation (AKA)といいます。
下腿切断術の術式はこちらです。
適応
糖尿病足壊疽、慢性骨髄炎など難治性感染症、閉塞性動脈硬化症など末梢血行障害による壊死、悪性骨軟部腫瘍、治療の困難な広範囲の外傷、先天性の奇形・変形など。下腿近位に褥瘡など皮膚の問題がある場合は、大腿で切断します。
大腿切断術は膝が失われる。その為、義足をコントロールするためのより強固なレバーアームの構築が重要である。通常のAKA用の義足の膝関節は、断端のソケットから9−10cm遠位にある。義足の関節の為の十分なスペースを作る必要がある。もしも切断面が遠位過ぎると、膝の位置が正常側と変わってしまい、座った時に見た目が不自然になる。
虚血肢以外の場合、myodesisかmyoplastyが強固な断端を作るのに有用だ。虚血肢の場合はmyodesisは虚血を悪化させるので行ってはならない。myoplasyによる筋肉の安定化は、切断後にしばしば起きる大腿骨が前外側に偏位する問題を予防するのに有用だ。
□術式 非虚血肢の場合
仰臥位、ターニケットを使用。
皮切は骨切りラインの高さから始める前方と後方の皮弁は同じ長さにする。皮弁の長さは、切断高位の大腿の前後径の最低1.5倍にする。
前方の皮弁作成。皮切は大腿内側の骨切りラインから開始し、緩やかなカーブを描いて前方の皮弁の先端まで皮切し、同様に外側まで切開する。同様に後方皮弁を作成する。
皮下組織、深部筋膜まで切開し、骨切り高位まで皮弁を近位に反転させる。
大腿四頭筋と筋膜を剥離し、反転させ、筋・筋膜皮弁とする。
大腿内側の大腿動脈、大腿静脈を同定し、それぞれ結紮、切断する。全周性に大腿骨骨膜を切開する。骨膜切開部でボーンソーで大腿骨を切断する。
ラスパで骨切断面を滑らかにする。切断面の前外側を平らにする事により、骨と軟部組織の間の圧を減らす。ハムストリングのすぐ下にある坐骨神経を同定し、切断面より近位で結紮する。結紮したところからなるべく遠くまで剥離する。
表皮の神経をなるだけ同定し、stumpからなるだけ離れたところで切断する。洗浄。
大腿骨の切断近位にドリルで小孔を空け、内転筋とハムストリングを非吸収糸もしくは吸収糸で縫合する。
筋肉は少しテンションがかかった状態にする。ターニケット開放。
「四頭筋のエプロン」で骨断端を覆う。前方と後方の筋膜を縫合する。余分な筋肉や筋膜をトリミングする。
ドレンを筋膜下に挿入し、創から10cm以上離れた所から出す。 結節縫合で閉創する。
□術式 虚血肢の場合
仰臥位、ターニケットを使用しない。
皮切は骨切りラインの高さから始める前方と後方の皮弁は同じ長さにする。皮弁の長さは、切断高位の大腿の前後径の最低1.5倍にする。
皮切から皮下組織を切開し、深部筋膜まで切開する。後方の皮弁を反転させる。
前方の皮弁は反転させない。その代わりに四頭筋と前方筋膜を皮切に沿って分割し、筋肉とそれに付着した皮膚と筋膜をmyocutanious 皮弁として骨切断高位まで反転させる。
腿内側の大腿動脈、大腿静脈を同定し、それぞれ結紮、切断する。全周性に大腿骨骨膜を切開する。骨膜切開部でボーンソーで大腿骨を切断する。
ラスパで骨切断面を滑らかにする。切断面の前外側を平らにする事により、骨と軟部組織の間の圧を減らす。ハムストリングのすぐ下にある坐骨神経を同定し、切断面より近位で結紮する。結紮したところからなるべく遠くまで剥離する。
後方の筋肉を分け、断端が骨切り高位に来るようにする。下肢を取り外す。
表皮の神経をなるだけ同定し、stumpからなるだけ離れたところで切断する。洗浄、止血。
前方の筋皮弁で切断面を覆い、深部筋膜同士で縫合する。
ドレンを筋膜下に挿入し、創から10cm以上離れた所から出す。 結節縫合で閉創する。
1890年代のAKAの手術映像。早い!
大腿切断手技の映像。 上記で説明した方法とは違うやり方です。