2013-10-04 http://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php
2 痛風関節炎の治療
治療手段としては,コルヒチン,NSAID,副腎皮質ステロイドの3つの手段を選択しうる。いずれも臨床的効果は確認されている。痛風発作の前兆期にはコルヒチン1錠を経口的に投与し,極期にはNSAIDを短期間のみ比較的多量に投与して炎症を鎮静化させる方法が一般的である。しかし,副腎皮質ステロイドも十分に有効な薬剤であり,経口,筋注,関節内注入などの患者の状態に合わせた投与ルートが選択できる利点がある。
1 コルヒチンの投与法
a.痛風発作の前兆期の投与法
わが国におけるコルヒチンの投与法は,欧米とは異なり発作の早期に少量用いる方法が一般的である16)。すなわち,コルヒチンは痛風発作の前兆期に1錠(0.5mg)のみ用い,発作を頓挫させる。このために痛風患者にはコルヒチンを処方し,携行することを勧める。発作の極期に開始すると大量投与しても十分な有効性が得られない。また大量投与は副作用が多い。副作用として最も多いものは腹痛と下痢であり,嘔吐,筋痙攣などがそれに次ぐ。これらはいずれも24時間以内に出現する。また,末梢神経障害,汎血球減少症などの報告もある。
b.痛風発作の予防措置としての投与法
痛風発作が頻発する場合,また尿酸降下薬の投与開始後に血清尿酸値の低下に伴う痛風発作17)が予測される場合は,コルヒチン1日1錠を連日服用させる(コルヒチン・カバー)。後者の目的で用いる場合は1~3ヵ月間投与し,その後中止する。
2 NSAIDの投与法
痛風発作に対するNSAIDは,短期間のみ比較的多量に投与することが原則である(NSAIDパルス療法)。具体的には,たとえばナプロキセンの場合,300mgを3時間ごとに3回,1日に限って投与する。その後も疼痛が軽減しない場合には,3回投与後,24時間の間隔を置いてもう1度,300mgを3時間ごとに3回服用させる。多くの場合,この処置により痛風発作は軽快する。激痛が軽減した後も関節痛が持続して,日常生活に支障をきたす場合には,NSAIDを常用量投与する。痛風関節炎が軽快すればNSAIDは中止する。
NSAID投与時の一般的な問題点としては,胃粘膜病変(特に胃潰瘍)の誘発や増悪,腎障害の増悪,ワルファリンカリウムとの薬剤相互作用などがある。痛風患者では軽度の腎障害が存在することが多く,NSAID投与によりプロスタグランジン産生抑制が起こると腎血流量の低下を招くことがある。腎障害の存在が確認されている患者や下肢の浮腫がある患者に対しては,腎障害が少ないとされるNSAIDの選択が好ましい。またNSAIDを使わずに副腎皮質ステロイドを用いるのもよい。ワルファリンカリウム投与中の患者ではNSAIDを使わず,副腎皮質ステロイドを用いる。
3 副腎皮質ステロイドの投与法
痛風関節炎において,NSAIDが使用できない場合,NSAID投与が無効であった場合,多発性に関節炎を生じている場合などには,経口にて副腎皮質ステロイドを投与する。一例として,プレドニゾロン15~30mgを投与し関節炎を鎮静化させ,1週ごとに3分の1量を減量し,3週間で中止する方法がある。重症例においては,少量(1日5mg程度)を数ヵ月間投与せざるを得ない場合がある。
痛風患者で,膝・肘関節などに水腫を伴う関節炎を有する場合には,関節を無菌的に穿刺し,可及的に関節液を排液,除去した後に副腎皮質ステロイドを注入する。少しでも化膿性関節炎の疑いがある場合は,関節液を培養に提出する。この場合は,穿刺のみにして副腎皮質ステロイドを注入してはならない。
なお,関節リウマチに適応を有する静注用リポ化デキサメタゾンパルミチン酸エステル(リメタゾン®)の投与も有効であるが,痛風発作に対する保険適応はない。
痛風診療ガイドライン(American College of Rheumatology)
16 April 2013 | ACP Journal Club | Volume 158 • Number 8
1. 初回発作時の治療は、生活指導(食事・運動)のみ。
食事指導: 赤身、レバー、腎臓、貝、イースト菌抽出物、タンパク全般を減らす。フルーツ、野菜、大豆を摂取する。肥満の場合、体重を減らす。アルコールを減らす。可能であれば、利尿剤を減らす。
2. 繰り返す発作、痛風性関節症、腎症、痛風結節がある場合は、尿酸降下薬を検討する、
無症候性の高尿酸血症の治療は推奨されない
(Arthritis Care Res. 2012;64:1431-1461
アロプリノールの腎障害、重症型の皮膚障害DIHS(drug induced hypersensitivity syndrome
日本では尿酸値が高い(>9.0mg/dl)なら治療が推奨されている(日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン作成委員会(2010)『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン-第2 版-』メディカルレビュー社)
Neogi T et al.(2011) Gout. N Engl J Med. 364:443-452.
高尿酸血症には様々な合併症が指摘されており、介入することでCKDの腎機能悪化のリスクを3分の1程度に下げることができる可能性はあるものの、痛風関節炎や尿路結石などの予防には信頼性の高いエビデンスはなく、悪性腫瘍と総死亡に関しては報告によって結果に隔たりがありコンセンサスは得られていないと言える。また、尿酸値コントロールにはDIHSのような重篤な副作用の懸念もある。日本では成人男性の26.2%が高尿酸血症を有すること※9からも、高尿酸血症に遭遇する機会は多いが、治療は不要な場合が多いと考える。
http://georgebest1969.typepad.jp/.a/6a0148c740c225970c0191027e5eed970c-pi
Up-to-Date 2013
UpToDateでは無症候であれば血清尿酸値が男性で13mg/dl、女性で10mg/dlを越えてから薬物治療すること※1を、また、NEJMのreviewでは1年間に少なくとも2度の痛風発作を起こした人あるいは痛風結節を有する人を薬物治療の対象にすること※6をそれぞれ推奨している。一方で、尿酸値コントロールの第一選択薬であるアロプリノールには、最大5%の患者に副作用の皮膚症状が見られスティーブンス・ジョンソン症候群※7、最大0.1%の頻度で薬剤性過敏症症候群(DIHS)が認められる※8。
新しい痛風治療薬 フェブキソスタット(フェブリク錠®)
ACR 痛風発作診断基準
Preliminary criteria for the classification of the acute arthritis of primary
gout. Arthritis Rheum. 1977
1. 関節液中の尿酸結晶の証明
2. 痛風結節中の尿酸結晶の証明
3. 下記13項目中6項目以上を満たすもの
のいずれかを満たすものが、痛風の可能性が高い。
http://www.rheumatology.org/practice/clinical/classification/gout.asp
1. 一回以上の発作。
2. 1日以内に悪化する関節炎
3. 単関節炎
4. 関節の発赤
5. 第一趾MTP関節の痛みと腫脹
6. 片側の第一趾MTP関節の発作
7. 片側の足関節の発作
8. 痛風結節(確定、疑い)
9. 高尿酸血症
10. レントゲンによる非対称性の関節腫脹
11. エロージョンを伴わない皮質下のcyst
12. 尿酸ナトリウム水和物
13.関節液培養陰性
http://www.ajmc.com/publications/supplement/2005/2005-11-vol11-n15Suppl/Nov05-2217pS443-S450/
尿酸塩の針状結晶
http://tmamt.or.jp/ippan/phototest/no11/mondai11.html