若くて骨のしっかりした方であれば、よほどの強い外力(交通事故や転落)でも無ければ脊椎が骨折することはありません。
しかし、高齢になり骨がもろくなると、しりもちや転倒といった軽微な外力で骨折してしまいます。なかには、布団を持っただけ、咳をしただけでも折れてしまう方もいますし、「いつのまにか骨折」と呼ばれるように知らないうちに骨折して徐々に腰が痛くなり動けなくなる方もみえます。
痛み止めを飲みコルセットをして日常生活を送ることができる方もいれば、痛みで動けなくなり、長期間入院する方もみえます。多くは数ヶ月以内に骨折部が癒合し、痛みが軽減しますが、中には骨折が癒合せず、偽関節と呼ばれる状態になり、いつまでも痛みが続くこともあります。
高齢者のせぼねの骨折、いわゆる腰椎圧迫骨折や脊椎骨折は日本で年間200万人程度発生していると推計されており、高齢者の寝たきりの主要な原因の一つです。
脊椎骨折に対する手術治療は、従来は脊椎固定術とよばれる侵襲の大きな方法が行われていましたが、高齢者にとってはリスク高い治療法でした。
従来手術に変わる治療法として、1980年代にフランスの医師により経皮的椎体形成術が始められ、2000年代に日本で先進医療として導入されました。僕自身は2007年に全国でも先駆けて手術を開始し、学会発表、論文発表を行っています。当時は専用の手術器具はなく、既存の道具を工夫して手術を行っていました。
さらに従来の椎体形成術を改良した、椎体形成術専用の器具、BKPが国内で2011年にメドトロニック社から発売、保険収載されました。
BKPとはBaloon Kyphoplasty(風船後弯矯正術)の略です。
全身麻酔、経皮的手術で行います。手術時間は30分以内。術直後から除痛を得られ、すぐに歩くことができます。
BKP発売当初は、重篤な合併症を避けるために手術適応を慎重に選んでいました。そのため長期に痛みが続く偽関節例を中心に手術を行っていました。
近年は安全に手術をおこなう「コツ」がわかってきたために、経験豊富な医師を中心になるべく早期にBKPを行う施設が増え、学会発表も行われています。
次に、早期BKPの論文を紹介します。
2022-05-20