多くの臨床家にとって、統計学は苦手な分野です。僕もその例外ではありません。
統計学を知っていれば、ダマされない。
論文を読まなくても、統計を知らなくても、最新の知識がなくても、無難な治療をしていれば多くの目の前の患者さんは治るかもしれません。統計学を覚えたって、目の前の患者さんはすぐに良くなるわけではありません。 しかし、今やっている治療は果たして正しいのでしょうか?学生時代や研修医時代に教科書や先輩から習った治療法は、本当に患者さんの役にたっているのでしょうか?
医学技術は日々進歩しています。今日の標準的治療法が、明日には患者を傷つけている事が判明する、なんて事は珍しくありません。「医師の無知は罪」というのはあながち間違っていません。
さらなる高みを目指す場合、自分で最新の医学論文を読みこなす必要があります。論文に使われた統計を理解していなければ、EBMに基づいて論文を読んだとはいえません。執筆者は、自分の考えを伝えたいがために、意識的か無意識的にか、統計学で「嘘」をついてきます。嘘というと語弊があります。正しくは、エビデンスの弱い部分を複雑な統計学を駆使して誤魔化します。ディオバンの例をあげるまでもなく、論文にだまされないためにも、正しく統計を理解する必要があります。
統計学を知っていれば、世界の医師と同じ土俵で戦える。
統計学を理解するもう一つのメリットは、自分から情報を発信する道具を手に入れる事ができることです。
せっかく新しい手術の方法や治療法を編み出しても、他人に伝えなければ、その恩恵に預かれるのは自分の目の前に患者さんだけです。外科医が一生のうちに手術する患者数は限られています。しかし、その治療法の情報を上手に発信できれば、世界中の患者をがその利益を享受できるようになります。なので、僕は情報発信は医師の責務だと考えています。
ではどのようにしたら日本中に世界中に自分の知見を伝えることが出来るのか?
学会に参加して、声高に発表しても、たまたま学会に来た医師にしか伝わりません。
一番有効な方法は論文を英語で書くことです。一度論文を出版してしまえば、googleやPubmedが、情報を一番に必要としている人に僕の論文を提示してくれます。
論文を書くのに必須なのが、統計学(と英語)の知識です。定められた統計のお作法を守って自分の治療法の有効性を示さなければ、相手にもされません。医学の分野では統計学は世界の共通言語なのです。
以上から、外科医にとって統計学の知識を身につけるのは、糸結びを覚えるのと同じくらい重要な事だと考えています。
統計の苦手な僕が、必要にかられて必死にまとめた内容です。至らない点があるかもしれませんが、ご容赦下さい。
2014-02-27
ー目次ー
信頼性の検定 SPSSを用いたKappa値と級内相関係数(ICC)の求め方
ect,,,
スマホでご覧になられている方は上記の「メニュー」ボタンから、PCからアクセスしている方は左のサイドバーから記事をお選び下さい。