サルコペニアの診断法はいろいろありますが、筋量を用いるのが標準的な方法かと思います。
全身の筋量を測る方法は、DXA法と、BIA法というのが主流です。
①DXA法(Dual-energy X-ray absorptiometry法): 骨密度の計測でも用いられている方法であり、以前はDEXAとも呼ばれていた。整形外科領域では馴染み深い方法である。一般に放射線は物質内を通過する際に減衰するが、その減衰率は組織の体積、物質を構成する元素の種類、放射線の強さに影響される。この特徴を生かし、二種類の強さのX線を生体に照射し、それぞれの減衰率から身体組織の組成量を、骨塩量(BMD)、脂肪量、除脂肪量(≒内蔵、筋肉)の3種に分け計測することができる。DXA法により測定された組織量と、重量計で測定された重量とはよく一致する。特に内臓重量の影響を受けない上下肢においては、除脂肪量と骨格筋量はほぼ同等であるとみなせる。ただし、一般によく用いられる腰椎・大腿骨頚部のDXA装置ではなく、全身の測定が可能な装置(GE,Hologic社)が必要です。筋量の評価法として、全身の筋肉量(lean mass)を用いる方法や上下肢の筋肉量を用いる方法、上下肢の筋肉量を身長で除した値を用いる方法などがありますが、上下肢の筋量をBMIと同様に身長の2乗で除した値であるskeletal muscle mass index (SMI)を用いた評価法が主流です。
DXA法の日本人のサルコペニアの診断基準値は、真田先生らの論文で、Baumgartnerの基準に従い、18歳から40歳の健常な日本人男女529名の平均値の-2SDの値を算出されています。補正四肢筋量ASMI(appendicular skeletal mass index)が女性で5.46kg/m2以下,男性で6.87kg/m2以下をサルコペニアありとしています。
アジア人の基準に関しては、こちらの記事を参照してください。サルコペニアの診断基準 アジアの基準他
②bioelectrical impedance
analysis(BIA法): BIA法(生体電気インピーダンス法)は市販の体脂肪計と同じ原理で、生体に微弱な交流電気を流し、組織の電気抵抗(インピーダンス)を計測する。脂肪・筋肉・骨の生体組織の違いにより電気抵抗が異なる事を利用して体組成を測定する方法です。体液量に左右されやすく、骨量の影響を受けやすく、合併する疾患の影響を受けやすい。そのため心不全、感染症、脱水などの全身疾患のある患者では正確性に劣る。簡便無侵襲で、検診に向いています。米国のBiospace社、日本ではタニタが医療研究用機器を作っています。
BIA法の日本人基準値は、 、、
最近阪大の谷本先生の疫学研究から、18-39才の若年ボランティア1719名の平均-2SD値から、先述のSMIが男性7.0kg/m2未満、女性5.8kg/m2未満とするサルコペニア診断基準値が報告されました。(Tanimoto Y, et al. Archives of Gerontology and Geriatrics 2012)
アジア人の基準に関しては、こちらの記事を参照してください。サルコペニアの診断基準 アジアの基準他
③CT、MRI断面積法(CSA法、cross sectional area)
大腿部などの特定の部位においてCTやMRIで筋量の断面積を計測し、筋量を求める方法である。検査の侵襲が大きく、検査費用も高額で、計測も煩雑であるが、正確性が期待できる方法である。健常人データを基にした診断基準値はまだ定められていない。
④四肢周囲径
上下肢の特定部位の周囲径を測定する、メジャー一本あればできる簡便な方法である。しかしながら、加齢や肥満の影響を受け易く、sarcopeniaの評価では正確性に劣る。
その他にも、簡便な方法として握力計などを用いた筋力測定があります。
アイソトープやクレアチニンクリアランスを用いた方法もありますが、やや煩雑です。
こちらのレビューが、筋量測定法についてまとまっています。
Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age Ageing 2010; 39: 412-23.